夏の食卓に欠かせない「冷やし料理」。
実は日本各地にも、昔から暑い季節を快適に過ごすための“冷やし系郷土料理”が存在します。
そうめんや冷奴だけでは語り尽くせない、土地の知恵と工夫が光るメニューを見てみましょう。
日本全国の「冷やし料理」
▋冷や汁-ひやじる- 〔宮崎県〕
冷や汁は、主に宮崎県を中心とした九州地方で古くから食べられている夏の郷土料理で、
「冷たい味噌汁をご飯にかけて食べる」スタイルが特徴です。
焼き魚と味噌、ごまをすり鉢でよくすり混ぜたものを、
冷たいだし汁(麦茶や煮干し出汁など)でのばし、ご飯にかけていただきます。
きゅうりの薄切り、大葉やみょうが、ねぎなどの薬味をたっぷりのせていただきます。
爽やかな香りと食感が、暑さで弱った体に嬉しいアクセントになります。
▋冷や汁-ひやじる- 〔埼玉県〕
埼玉でも「冷や汁」という名前の料理がありますが、宮崎とは異なり豆腐が主役。
冷たい味噌だれと薬味をかけて混ぜるシンプルな一品で、埼玉の農村で昔から食べ継がれてきました。
味噌を煮干しや昆布でとった冷たいだし汁と合わせてあっさりと仕上げ、
きゅうり、みょうが、青じそ、ねぎなどの薬味をたっぷりかけて暑い夏にぴったりの清涼感を感じられます。
▋冷たい肉そば 〔山形県〕
冷たい肉そば」とはざる蕎麦ではなく、冷たいスープに入ったそばです。
山形県河北町(かほくちょう)を発祥とする郷土料理で、
鶏の旨みが詰まった冷たいスープに、コシの強い田舎そばを合わせた一品です。
スープのだしを取った鶏肉(かしわ肉)を細切りにし、そばの上に盛り付けるのが特徴。
肉の旨みがスープにさらに広がり、食べ応えもアップ。
ネギや三つ葉、海苔、山菜など、季節の薬味を添えると、より爽やかな味わいになります。
▋稲庭うどん 〔秋田県〕
秋田県名物の稲庭うどんは、冷水でしっかり締めていただくのが定番。
稲庭うどんは、一般的なうどんの製法とは異なり、手練り・手延べ・手綯い(てない)という手作業による工程が多く含まれます。
細くてツルツルの食感と、喉ごしの良さは暑い日にこそ際立ちます。薬味をたっぷり添えてどうぞ。
▋じゅんさいの冷やし吸い物 〔秋田県〕
じゅんさいは、秋田県三種町を中心に日本各地で採れる水生植物です。
じゅんさいは、初夏から夏にかけてが旬。
冷やし吸い物にすると、じゅんさいの透明感と冷えた出汁の涼しさが相まって、食卓に清涼感をもたらします。
じゅんさいのプルンとした食感と、冷えた出汁の組み合わせが絶妙な一品。
家庭でも、瓶詰めのじゅんさいを使えば簡単に作ることができ、冷たく冷やすだけで上品な涼味を楽しめます。
おわりに
冷やし郷土料理には、暑さと上手につきあう先人たちの知恵が詰まっています。
冷や汁や冷たい肉そばなど、手軽に取り入れられるメニューも多いので、
この夏はぜひ郷土の味を食卓に取り入れて、涼を楽しんでみませんか?